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任意売却と税金のハナシ
不動産を売却する場合、税金が発生します。ここでは、任意売却にまつわる税金の種類をはじめ、知っておきたい特別控除や特例などについてまとめてみました。
任意売却で発生する税金の種類
譲渡所得税・住民税
不動産を売却して利益が発生した場合、所得に対して譲渡所得税と住民税を支払わなければいけません。また、課税譲渡所得にかかる税率は売却する不動産の所有期間によって異なり、「長期譲渡所得(所有期間5年超)」または「短期譲渡所得(所有期間5年以下)」のどちらかが適用されます。
ただし、所有期間が10年を超える不動産の売却で一定の要件を満たす場合は、軽減税率の特例を受けることが可能です。
印紙税
不動産を売却する際は売買契約書に収入印紙を添付する必要があり、印紙税とは収入印紙にかかる費用のことです。印紙税の金額は不動産の売却金額に応じて高くなり、詳しい価格は国税庁のHPで確認できます。特定の契約を満たす契約に関しては、軽減税率の適用が可能です。
登録免許税
抵当権が設定されている不動産の場合、抵当権抹消の手続きを行なわないと任意売却を実施できません。抵当権の抹消にかかる登録免許税は、不動産1件につき1,000円かかります。ただし、抵当権抹消の手続きは一般的に司法書士に依頼するケースが多く、登録免許税のほかに依頼料として数万円程度が必要です
印紙税と登録免許税の工面が難しい場合は、債権者との交渉次第で売却代金から支払うことができます。
任意売却で譲渡所得税がかからないケース
売却しても利益がでない
譲渡所得税は不動産を売却して利益が出た場合に課される税金のため、売却益が発生しないのであれば譲渡所得税はかかりません。特に任意売却だと売却金額を住宅ローンの返済にあてても完済できないケースが多く、売却益が発生しないので譲渡所得税がかからない場合がほとんどです。
売却益が3,000万円以下または3,000万円以下での売却
自宅(居住用財産)を売却する場合、売却益から3,000万円までの特別控除を受けられる特例が適用されます。売却益が3,000万円以下であれば特別控除により利益がなくなるため、譲渡所得税は課されません。また、自宅を3,000万円以下で売却する場合も、特別控除により譲渡所得税の課税対象外になります。
ただし、この特例は「自宅」の売却に限られているため、投資用の物件や会社の事業資産の任意売却には適用されないので注意しましょう。また、住民票があるだけでは自宅の証明にならず、生活の実態があることが求められます。
強制換価等による特例
任意売却や競売で不動産を売却する場合、所得税法9条で定められている「強制換価等による特例」が認められることがあります。強制換価等による特例とは、資力の喪失によって債務の返済が困難になった場合に対し、不動産をやむを得ず手放す場合に特定の所得税を非課税とするものです。そのため、住宅ローン返済のための資金調達として任意売却を実行する場合は、譲渡所得税および住民税がほとんどかからないとされています。
ただし、任意売却により利益がでた際は、譲渡所得税の課税対象になります。
任意売却で譲渡所得税が課されるケース
不動産を取得したときの金額が不明
相続での取得や購入時の書類紛失などで物件の購入にかかった費用が分からない場合、譲渡所得税の計算に必要な取得費をしっかりと計上できません。売却金額の5%相当額を取得費とすることもできますが、取得費をもれなく計上することが節税につながるため、場合によっては譲渡所得税や住民税が課される可能性があります。
任意売却で住宅ローンを完済できた
任意売却で得た利益で住宅ローンを完済でき、さらに手元にお金が残った場合、いわゆるオーバーローン(債務超過)に該当しないため、強制換価等による特例の適用は受けられません。そのため、譲渡所得税や住民税の課税対象になります。
自宅を3,000万円以上で売却または自宅以外の不動産を売却
自宅を任意売却で手放すケースでは3,000万円までの特別控除が適用されるので、3,000万円以下で売却する場合は譲渡所得税は課されません。3,000万円以上で自宅を売却、もしくは自宅以外の不動産を売却した場合、譲渡所得税の課税対象になる可能性があります。