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不動産会社
ここでは任意売却を不動産売却会社に依頼する場合の知っておきたい情報や注意点について紹介しています。
通常の不動産会社と不動産売却会社の違い
任意売却を相談する不動産売却会社は、一般的な不動産会社とは異なります。不動産売却会社の特徴は、債権者である金融機関と交渉できることです。
任意売却の場合、返済できなくなった住宅ローンへの対応が必要になります。通常の不動産売却の手続きに加えて、債権者との交渉をしなくてはなりません。そのため不動産売却会社には、不動産だけでなく、税金や法律の知識、債権者と債務者の間を取り持つこと、弁護士や行政書士などの他業種との連携が求められます。
競売と任意売却の違い
住宅ローンを滞納してしまうと、債権者である銀行から強制的に不動産を競売に出されてしまいます。これは住宅ローンの担保である抵当権が原因です。ただし競売に出される前に、任意売却をすることで競売を避けることができます。まずは競売と任意売却の違いについて解説します。
強制か任意かの違い
競売と任意売却の大きな違いは、強制か任意かの違いです。抵当権を理由に銀行が強制的に売却する競売に対して、任意売却では所有者自身の意思で売却します。
売却金額の違い
不動産の売却金額は、競売の方が安く、任意売却の方が高いです。任意売却なら市場価格に近い金額で売却できます。競売の方が安くなるのは、住宅ローン滞納によって所有権を取り上げられてしまうからです。
退去・引越し条件の違い
競売の場合は、強制的に退去しなくてはなりません。一方任意売却の場合は、引越し時期を相談したり、売却金額から引越し費用を捻出したりすることができます。また任意売却では引越しをする前に売却手続きを進められることも特徴です。
情報公開の有無
競売の場合は、売却の際に金融機関から情報が公開されます。つまり住宅ローンを滞納して強制的に競売に出されたことが明らかにされてしまうのです。一方任意売却の場合は、通常の不動産売却と同じ扱いになるので、住宅ローンを滞納したことが知られることはありません。任意売却ならプライバシーも保護できます。
不動産売却会社に任意売却するメリット
ローンの残債を分割で支払える
任意売却を行なっても、債務を完済できるとは限りません。しかし残った債務は分割払いで返済することができます。一括返済しなければならない競売と比べると、任意売却の方がゆとりを持った返済が可能です。
ただし分割返済には利子が発生するので、できるだけ短期間で返済するようにしましょう。債務整理のできる専門家に相談や、任意売却以外の債務整理の検討も効果的です。
仲介手数料がかからない
不動産売却会社への任意売却では、仲介手数料がかかりません。通常の任意売却では必ず不動産会社への仲介手数料が必要になります。それは不動産を売却する人と購入する人とを不動産会社が仲介するからです。
しかし不動産売却会社の場合は仲介するのではなく、不動産の買取を行う業者です。買い取った不動産は、リフォームやクリーニングを経て新しく販売されます。そのため任意売却の時点では、仲介ではなく買取になるので仲介手数料が不要になるのです。
リフォーム・クリーニング不要
通常の任意売却では、不動産を少しでも高く売るためにリフォームやクリーニングが行われます。この場合、その費用は売却益から支払われます。
一方不動産売却会社への任意売却の場合は、売却後にリフォームやクリーニングがされるので、債務者が支払う必要はありません。その分売却金額は安くなってしまうので、手間や支払いと売却益のどちらを選ぶか、債務の量をふまえて検討しましょう。
短期間で終わる
不動産売却会社での任意売却は、買取手を探したり、メンテナンスしたりする必要がないので、その分短期間で売却が完了します。強制競売までの期間が短い場合には、不動産売却会社で任意売却をすると良いでしょう。
内覧が不要
仲介で任意売却をする場合、買取手が不動産の内覧をすることが一般的です。しかし任意売却の場合は、迅速な手続きが求められるので、引越しする前に内覧が行われることがよくあります。
一方不動産売却会社への任意売却なら、内覧が必要ありません。自分がまだ生活している状態で内覧されるのは精神的な負担になりやすいので、引っ越しのスケジュールと合わせて検討すると良いでしょう。
不動産売却会社に任意売却するデメリット
売却金額が安い
不動産売却会社に任意売却する一番のデメリットは、売却金額が安くなりやすいこと。不動産売却会社は買取した不動産をメンテナンスし、付加価値をつけて再販売することで利益を出すため買取金額は安くなります。
逆にほかの専門家に依頼して任意売却をする場合は、リフォームやクリーニングの代金、相談料、仲介手数料などが必要。その分だけ物件価値が高まり、高額で売却できる可能性が広がります。
どちらを選ぶかの判断基準は、債務額の量で決めると良いでしょう。債務が多い場合はできるだけ高く売らなくてはなりません。逆に債務が少ない場合は、手間を省略できる方が便利です。
任意売却後の債務整理の相談ができない
任意売却後の債務整理の相談ができないこと。弁護士、行政書士、司法書士なら、債務整理の一つとして任意売却をすることになります。そのため任意売却をしても債務が残る場合は、最後まで債務整理のサポートをしてくれます。
しかし、不動産売却会社への依頼の場合は、任意売却をすることが目的です。売却後に債務が残らない場合、専門家に頼らなくても自分で債務整理ができる場合は不動産売却会社に相談して問題ありません。
手続きの代行サービスがない
手続きの代行サービスがないこと。弁護士、行政書士、司法書士への依頼では、必要書類の取り寄せなどの面倒な手続きを代行してくれるサービスがあります。これは専門的な資格と知識に基づいて行われるサービスです。
もちろん代行サービスには追加料金がかかります。任意売却の相談をする際には、手間の省略と売却益のどちらを優先するか考えてみましょう。
不動産売却会社に任意売却するときの費用
不動産売却会社に任意売却をするときにかかる費用は、手数料と抵当権に関する費用です。いずれも不動産の売却益から支払われるので、別途で用意する必要はありません。
依頼する上でのポイント
不動産売却会社に依頼する上でのポイントは5つ。
- 任意売却の実績があるか
- 債務金額の大小の把握
- 債務が残るかどうか
- ほかの専門家との連携
- 代行サービスの必要性
まずは任意売却の実績をチェック。不動産売却会社を比較するときは実績があるかどうかだけではなく、どんなケースの任意売却を経験したことがあるかを調べることがポイント。自分の状況と似た事例を探すことにより、ケースバイケースで対応してもらえるでしょう。不動産売却会社のHPを見れば過去の事例を見ることができますし、電話やメールで質問をしても構いません。
次に不動産の売却益に対して、債務金額が大きいか小さいかを把握しましょう。債務が残る場合は、その後の債務整理が必要になるので弁護士、行政書士、司法書士に依頼した方が良いです。債務が残らない場合、自分で債務整理ができる場合は不動産売却会社でも構いません。
自分で債務整理できず、ほかの専門家に依頼するときには、不動産売却会社と連携している専門家に依頼できるとスムーズです。自分で適切な専門家を探す手間が省けますし、場合によっては相談料を融通してもらえることもあります。
また代行サービスが必要かどうかも考えましょう。自分でできるだけの知識や時間がある場合は、不動産売却会社への相談でも問題ありません。
任意売却の流れ
不動産売却会社を選ぶ
まずは不動産売却会社を選びましょう。過去に任意売却の実績が豊富な不動産売却会社がおすすめです。事前に査定価格をシミュレーションして見積もりを出せる場合があるので、複数の不動産売却会社を比較しましょう。
任意売却の相談・査定
依頼する不動産売却会社が決まったら、任意売却の相談と査定を行います。自分の債務の状況、これまでの返済状況、今後の返済計画、任意売却する不動産の現状を踏まえて査定をします。
任意売却のプランを相談
査定が完了したら、不動産を売却するためのプランを相談。査定金額に応じて、リフォームやクリーニングをしたり、宣伝広告を出したりすることもあります。どのくらいの費用をかけて、どのくらいの金額で売却するのかというプランを決定します。
実際の手続きの実行
プランが決まったら、実際に手続きを進めていきます。不動産売却会社が債権者である銀行と交渉したり、不動産の購入者を探したり。ただし、不動産売却会社が買い取る場合は、購入者の仲介はありません。
支払い・抵当権抹消登記
手続きが完了したら、支払いと抵当権に関する手続きを行います。債務者が支払うのは、手数料と抵当権抹消費用です。不動産の購入者がいる場合は、購入者が抵当権登記費用を支払います。
債務整理
法的な手続きを経たら、不動産を売却会社に引き渡します。このときに売却金額を受け取って債務を返済してください。任意売却をしても債務が残る場合は、この後にも債務整理が続きます。不動産売却会社ではその後の債務整理のサポートがないので、自分で行うか、弁護士などの専門家に依頼するか選びましょう。
任意売却をしても債務が支払えなかった場合
個人再生
個人再生とは、裁判所に申請することで債務を大幅に減額してもらい、数年間に渡って分割返済をする方法です。将来的に継続して収入が得られる可能性があり、債務が5,000万円以内であれば個人再生が認められます。
ただし個人再生をすると、最長10年間の借入が不可能になり、個人情報が公開されてしまいます。また分割返済を継続できる収入があることを証明できないと個人再生を受けることはできません。
自己破産
任意売却をしても債務が残り、その支払いが困難な場合には、自己破産という選択をとることになります。自己破産とは、借金をゼロにする代わりに様々な制限を受ける仕組みのことです。
例えば自己破産をすると、最長10年間に渡って銀行から融資を受けられなかったり、クレジットカードを作れなかったりします。また自己破産をした履歴はその後も残り続け、手続きをする3ヶ月間は再就職などに制限が生じてしまいます。
不動産売却会社以外の相談先との違い
任意売却は不動産売却会社以外の専門家にも相談できます。ここでは以下の4つの専門家と不動産売却会社を比較しながら解説します。
- 弁護士
- 行政書士
- 司法書士
- 銀行
それぞれの専門家にはそれぞれの強みがあります。トラブルを避けてスムーズに任意売却を進めるには、複数の専門家と協力することが効果的です。
弁護士との違い
弁護士への相談では、任意売却が成立したあとの債務整理も依頼できます。債務が多いと、任意売却をしても完済できない場合が多いです。特に弁護士は法的な手続き、トラブルの対処に強いので、債務整理で問題が発生したときは相談してみましょう。
弁護士への相談費用は、任意売却もその後の債務整理も、すべて不動産の売却益から支払われます。弁護士を選ぶときには、任意売却の実績が豊富で、相談料不要のところにすると良いでしょう。
ただし任意売却の目的は債務整理。弁護士への相談費用で売却益が減り、借金が完済できない事態に気をつけてください。
行政書士との違い
行政書士の中には、宅地建物取引主任者の資格を持つ人もいます。これは不動産をやりとりするときに必要な資格です。この資格を活かして任意売却を進めることが特徴です。
また手続きの代行サービスでは、必要書類の準備だけでなく、不動産業者の仲介や見積もりも代行してもらえます。
任意売却が成立しなかったとしても、ほとんどの行政書士は相談費用を請求しません。しかし任意売却が成立しなくても支払いを請求される場合もあります。報酬形態がどのようになっているのかを事前に確認しておきましょう。
司法書士との違い
司法書士に任意売却の相談をする特徴は、債務全体のバランスを考えて債務整理ができることです。ほかの債務を解決することで、任意売却をしないという選択肢を選ぶこともできます。
例えば司法書士の相談でできるのは、債務全体の確認、任意売却以外の債務整理の検討、家計再生です。借金の原因、返済不可の原因から改善することで、債務をなくすことが目的になります。特にファイナンシャルプランナーの資格を持つ司法書士や、ファイナンシャルプランナーと連携している司法書士を選ぶと効果的です。
司法書士に相談する場合も、相談料は任意売却の売却益から支払われます。任意売却が成立しなかったときは、基本的に支払いは不要です。司法書士への主な支払いの内容は、抵当権の抹消登記、仲介手数料、相談料です。司法書士によっては相談料が無料になる場合もあります。依頼の際には、複数の司法書士を比較してみましょう。
銀行との違い
銀行への相談の特徴は、お金を貸している債権者に相談することです。つまり専門家の仲介なしで債権者に直接相談することになります。
また銀行では、任意売却の相談と一緒に、これまでの債務やこれからの返済計画も相談できます。専門家のサポートがないので、事前に債務計画を用意してから相談すると良いでしょう。
一方ほかの専門家にできて銀行の相談ではできないこともあります。一つ目は任意売却のサポートや代行サービスの依頼です。手続きに不安があるときは、弁護士や司法書士、行政書士に相談しましょう。
さらに任意売却が成立しても債務が残っているときは、弁護士、行政書士、司法書士に相談する方がスムーズです。銀行ではあくまでも債権者との直接相談になります。法的手続きや家計再生など、専門的なサポートを受けるならほかの専門を頼りましょう。
任意売却の相談は弁護士へ相談
不動産会社の中でも任意売却に関する幅広い業務に対応しますが、自己破産や個人再生などの債務整理についての具体的な相談はできません。そうした手続きは弁護士などの法律の専門家でないと対応できないから。自己破産は裁判所に申立てをして借金返済額を0にするものですし、個人再生も裁判所に申立てをして借金を減額する債務整理の方法です。
任意売却を行っても残債が多く分割返済も難しい場合は、こうした債務整理を視野に入れることが必要。その際は任意売却専門業者でも弁護士をはじめとするネットワークがあり、連携して進めることができるかどうかを確認しておくことが重要です。
サイト監修

東京スカイ法律事務所田中 健太郎弁護士
早く相談していれば良かったと
たくさんの声をいただいています
住宅ローンの支払いが困難になり、お悩みの方のために、東京スカイ法律事務所では任意売却のご相談を何度でも無料で受け付けています。「こんなこと聞いてもいいのかな?」といったことなど、どんな内容でもかまいませんので、お気軽にご連絡ください。皆様の住宅ローンに関する悩みを解消できるよう、誠心誠意ご対応いたします。
平成18年司法試験合格。平成20年から弁護士として大手弁護士法人に勤務し、平成23年9月東京スカイ法律事務所を設立。司法書士、宅地建物取引士の試験にも合格している不動産案件のエキスパート。不動産会社と提携し、任意売却に関する手続きをワンストップで対応しています。