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定年後払えない
住宅ローンは定年を考慮して組むことが一般的ですが、30代後半などで購入した場合は定年後も住宅ローンの支払いが残ります。退職金などを充当することを想定していても家庭事情などによって定年後に払えないこともあるでしょう。その場合どう対処すればいいのでしょうか。
定年後住宅ローンが払えないとどうなる?
滞納が続けば家を差押えられ競売にかけられてしまう
定年後に住宅ローンが払えない状態になり何も対応しないとどうなるのでしょうか。住宅ローンの返済が6ヵ月続くと金融機関は裁判所に申立てを行います。裁判所が申立てを認めると委嘱を受けた不動産鑑定士により土地や家屋の価格が算出され、それを最低売却価格として競売にかけられることになります。
家を差押さえられ競売にかけられると、退去しなければなりません。また、市場価格の半値ほどの安値で売却されることも多く、住宅ローン全額返済には足りないこともあるでしょう。
まずは金融機関に相談しましょう
返済期間の延長が認められることも
定年後に住宅ローンが払えない状況が想定される際には、早めに金融機関に相談することが大切です。金融機関に「リスケジューリング」を申請することで、一時的な猶予や返済期間の延長など、返済計画の見直しができる場合もあります。
ただし、金融機関や保証会社にとってはいつまでに完済するのかが重要であるため、住宅ローンの一部が免除になるなどの優遇措置は受けられません。あくまでも完済するための対処法を示してくれるだけとなります。
競売にかけられる前に任意売却という手段もあります
競売の場合は裁判所が委嘱した不動鑑定士の査定によって最低売却額が決定され売りに出されます。したがって、運よく売却できても住宅ローンの残債が多くなることが予想されます。
そうなる前におすすめしたいのが任意売却です。任意売却は市場価格に近い価格で売却できるだけでなく、一般の不動産売却として扱われるため競売のようにネットや広告などで近所や職場に事情を知られることもありません。
また、親族間売買や投資家に売却することでリースバックにより居住を続けることも可能な場合があります。持ち家を売却することに変わりはありませんが、売却後の人生を考えれば任意売却を検討した方がいいのではないでしょうか。
定年退職後に住宅ローンが払えない原因
定年後10~20年も住宅ローンの支払いが残っている
定年退職後に住宅ローンが払えない人が急増しています。その理由は、毎月の支払いやボーナス払いの額を抑えるために長期のローンを組んでいるからです。退職後も10年、20年と返済期間が残っていることも珍しくありません。
一般的な住宅ローンは、団体信用生命保険の制限年齢となる70歳まで融資を受けることが可能。一方、住宅金融支援機構を含む多くの金融機関では、最高完済年齢が80歳に設定されています。
例えば、45歳で35年の住宅ローンを組むと定年後20年間も住宅ローンの返済を続けなければならなくなります。なかには、計算上完済が100歳時というケースもみられます。
定年後は安定した収入が得られなくなることから、ほとんどの人は退職金を使って繰上返済することを想定しています。しかし、退職金を充当しても完済できないことは多く、退職後に再就職しても収入は大幅に減るため払えない状態になることが多いのです。また、退職金は老後のための大切な蓄えであり、全てを住宅ローンの支払いに回すと老後の生活が破綻するリスクもあります。
年金から住宅ローンの支払いは可能?
年金受給額のモデルは月額約221,000円
総務省の家計調査(平成30年2月現在)によると、世帯主が60歳以降世帯の平均消費支出額は、60~69歳で月279,718円、70歳以降で月212,508円となっています。一方、年金受給額は日本年金機構のモデル世帯では月額約221,000円(平成30年4月現在)となっています。
内訳は夫の老齢厚生年金約91,000円、老齢基礎年金約65,000円、妻の老齢基礎年金約65,000円です。モデル世帯は、夫が厚生年金に40年加入しており、妻が第3号被保険者を含めて国民年金を40年納めた場合とされています。
年金から住宅ローンの捻出は現実的ではない
しかし、実際の年金受給額はモデル世帯よりも少なく、夫が会社員、妻が専業主婦という世帯で月平均の年金受給額は20万円ほどとなります。また、老齢基礎年金は原則65歳からの受給なので、65歳までは夫の厚生年金しか受けられません。
さらに、今後も年金受給開始年齢は遅くなり、受給額も目減りする傾向があることから、年金で住宅ローンの支払いまでまかなうことはとても困難であると言えるでしょう。
現在急増している老後破産
近年、メディアでも老後破産という言葉が頻繁に登場しています。老後破産の厳密な定義はありませんが、広義では定年後に財産がない状態で実際に自己破産したり、自己破産はしていないものの極めて困窮した生活を送っていたりすることを指すと考えていいでしょう。
2018年現在では、老後破産の割合は高齢者世帯の約4割。特に独居世帯の半数は深刻な困窮状態にあり、そのうちの3分の1は生活保護受給世帯、残り3分の2の高齢者が老後破産の状態にあると考えられます。
老後破産しないためにも定年前に住宅ローンの完済がベスト
老後破産しないための対策の1つに定年までに住宅ローンの支払いを済ませておくことが考えられます。しかし、実際には定年退職後にも多額の住宅ローンが残っており、老後のための蓄えを全て失ってもまだ厳しい生活を強いられることは珍しくありません。自己破産をすれば財産は全てなくなりますが、年金の受給は受けられるため自己破産の選択をする人も多いようです。
サイト監修

東京スカイ法律事務所田中 健太郎弁護士
老後を安心して暮らせるように
任意売却も検討してみてください
30代後半に住宅を購入したことにより、定年後も住宅ローンを払い続けなくてはならないケースは多々あります。当初は年金でまかなえる算段が立ったのですが、期待していた支給額よりも少なかったため、支払いが困難な方が増えてきています。愛着のある家で老後は暮らしたいというお気持ちは分かりますが、もし支払いのめどが立たない場合は、任意売却を検討してみてください。東京スカイ法律事務所では、任意売却に関する相談は無料で何度でも承ります。お気軽にご相談ください。