公開日:|更新日:
まだ滞納していない場合
ここでは住宅ローンはまだ滞納していないが何ヶ月か先にその可能性がある場合の対処法について紹介しています。
まだ住宅ローンを滞納していない場合は
打つ手があります
景気や経済状況は常に変化しており良い時もあれば悪い時もあります。これまで住宅ローンが順調に払えていたという方でも、ある日突然、支払いが困難な状況がやってきても何の不思議もありません。
現在はかろうじて住宅ローンは支払うことができていて、まだ滞納しているわけではないが「支払いがキツイ」「これ以上払い続けるのは無理」という場合にはどうすればよいのでしょうか。
滞納さえしなければ差し押さえをされる心配はありません
人間は弱いもので、自宅が差し押さえられたらどしよう、自己破産してしまうのか、払えないことが近所にバレたら困る…など不安や心配ばかりが先に立ち、冷静な行動や判断ができなくなりがちです。
しかしよく考えてみてください。現在の自分は「滞納しそうではあるが、実際に滞納してはいない」ということです。どこからも咎められたり、責任を負わされることはありません。
この段階であれば打つ手は多く残されていますし時間もあります。ローンを滞納してしまいそうな方は、焦る必要はありません。まずは冷静になって何ができるかを整理して考えることが重要です。
住宅ローンを滞納しかねないポイント:フルローン
住宅ローンを滞納しかねないポイントとして、フルローンがあります。ここからは「フルローンとは何か」についての説明、「フルローンのメリット・デメリット」についてひとつずつ解説していきます。
フルローンとは
住宅を購入するときはほとんどの場合、頭金が必要なケースと考えて良いでしょう。頭金とは、物件価格の中で購入時に現金で払う額のことです。頭金の金額はおおよそ、2から3割程度と言われており、多くの場合はその残りをローンで補うのが基本となります。
ネット銀行によるサービス競争が激しくなっており、消費者のローン利用をうながすため、頭金なしで全てローンでまかなえるフルローンを組める銀行も増えてきています。フルローンは、物件の購入だけではなく融資手数料や登記費用など様々な諸経費もカバーできるような内容になっているプランにも注目です。
費用に加えて、リフォーム費用や引っ越し費用まで住宅ローンとして提供する金融機関も出ているのです。このように元々は諸経費や引っ越し費用はローン以外で用意する必要があったのですが、自己資金なしでも住宅購入ができるようになってきています。
フルローンのメリットは?
フルローンのメリットは以下のようなものがあります。
- 現金を残しておける
- すぐに気に入った物件が購入できる
- 低金利でローンが組みやすい
ひとつずつ解説していきます。
現金を残しておける
フルローンの最大のメリットは、頭金として用意していた現金を手元に残しておける点です。何らかの事情で世帯年収が下がってしまった場合や不測の事態が起こった場合でも、現金があれば安心できるでしょう。現金が手元にあれば、さまざまなトラブルへも対処できますし、他の予定に活用できるのが魅力です
すぐに気に入った物件が購入できる
頭金を数年かけて溜めていると、気に入った物件があったとしても溜まるまでは購入できません。自分の気に入った物件や土地を他の人に買われてしまうことも考えられます。フルローンを利用すれば、検討から購入までがスピーディーになるためそのようなケースも少なくなるでしょう。
物件を購入できれば住み替えがスピーディーになるので、頭金を貯めている間の賃貸家賃が発生しないメリットもあります。
低金利でローンが組みやすい
低金利でローンが組みやすい点もメリット。金利は時期によって変わっていくものですが、2019年のように住宅ローンが低金利で推移していればお得です。頭金を貯めている数年間の間に金利が上がってしまう場合も考えられ、超低金利の恩恵を受けられなくなってしまう可能性もあります。低金利での借入は利息の割合が小さくなるため、頭金を多く入れる効果は少なくなってしまうとも言えます。
フルローンのデメリットは?
フルローンのデメリットとしては以下のようなものがあります。
- 住宅ローンの返済期間が長期化する
- 住宅ローン審査のハードルが上がる
- 売却時にローン返済ができないこともある
こちらも、ひとつずつ解説していきます。
住宅ローンの返済期間が長期化する
フルローンは住宅ローンの返済期間が長期化する可能性も考えられます。頭金なしで全てローンで賄うため、借入金は大きくなってしまうからです。
借入金が多くなってしまうと、そのぶん利息も大きくなり全体のローン返済額も大きくなってしまいます。そうなるとやはり返済期間の長期化に繋がってしまうでしょう。
住宅ローン審査のハードルが上がる
住宅ローンの審査条件の一つに返済負担率という項目があります。この返済負担率とは、年収から考えた年間に返済する額の割合のこと。
先ほどお伝えしたように、フルローンの場合は借入金の金額が大きくなってしまいます。そうなるとやはり返済負担率も大きくなってしまいます。返済負担率が大きくなってしまうと審査に不利になってしまう可能性も考えられ、融資条件を満たさないといった判断になることも考えられます。
売却時にローン返済ができないこともある
住宅ローンの支払い中、住宅を売却する際はローン残高に売却した分を当てての完済を考えるものです。ただ住宅は、住み始めた時点から資産価値はどんどん下がっていきます。住み続ければ住み続けるほど、売却時の値段は下がってしまい、思っていた金額で売却ができないケースもあるのです。
頭金を入れず、フルローンで住宅を購入していた場合はローン残高が売却価格を上回ってしまう危険性もあります。また、家も売れず、ローンも返済できないといった状況になりかねません。フルローンでもっとも気を付けたいデメリットといえるでしょう。
住宅ローンを滞納しかねないポイント:オーバーローン
フルローンと同様に住宅ローンを滞納しかねないポイントとしてオーバーローンを解説していきます。オーバーローンは問題視されているローンの組み方です。
オーバーローンとは
オーバーローンとは、本来の借入目的よりも高い金額で住宅ローンを借り入れることです。フルローンのように諸経費を負担する程度なら問題はありません。オーバーローンは、住宅ローンを住宅価格よりも「水増し」した状態であり、余ったお金で家具や家電・クルマなどを買ってしまうことです。
住宅ローンは住宅を購入するためのローンのため、住宅に関わる費用以外に使うのは契約違反となります。銀行側で発覚した場合は、一括返済や違約金を請求されるケースもありえるのです。オーバーローンは契約違反であり、明確なリスクがあるため、利用するべきではないと考えられます。不要な借り入れは控えるようにしましょう。
オーバーローンのデメリットは?
オーバーローンのデメリットとして主なものは以下のようなものです。
- フルローンと同様のリスクがある
- 必要以上の借り入れは金利が高くなる
フルローンと同様のリスクがある
オーバーローンは、フルローンと同様のリスクがあります。
先ほどお伝えしたような売却時に住宅ローンが残ってしまうようなこともありますし、フルローンのように必要以上のお金を借りてしまうとローンの返済額も上がってしまいます。
通常ではローン返済以外にも、固定資産税の支払いや修繕費といった費用もかかってしまうもの。そういった意味ではフルローンよりもオーバーローンの方が支払いの負担は大きいでしょう
必要以上の借り入れは金利が高くなる
必要以上の借り入れは、自己資金よりも融資率が高くなるということです。自己資金が少ない場合、銀行からすれば「延滞する可能性が高まってしまう」とも考えられます。延滞のリスクを下げたいと考えれば、金利は高く設定されるものです。たった少しでも金利が変われば、将来的な支払いは大きく変わります。
怪我や病気などで一時的に働けなくなった場合に、住宅ローンを滞納してしまうというリスクが高まるともいえるため、オーバーローンは利用しないことを基本としておいてください。
まずは金融機関へ相談に行きましょう
一時的な返済の猶予や返済期間の延長ができることも
住宅ローンの返済が困難になり滞納しそうだという場合に最初に行動すべきことは住宅ローンの借入先である銀行や信用金庫、住宅金融支援機構などの金融機関にリスケジューリングの相談をすることです。
リスケジューリングとは返済条件の見直しを行うことで、返済期間の延長や一時的な返済猶予といった方法があります。例えば月々10万円の支払いが10年残っている場合、月々5万円にして20年にしてもらうことで月々の負担を軽減させます。
すべての金融機関がリスケジューリングを受け入れてくれるとは限りませんが、認めてもらえた場合は資金繰りが楽になり住宅を手放すといった不安が一時的にでも解消するというメリットがあります。
行動を起こさなければいずれ差し押さえられます
「そんなこと聞くのは恥ずかしい、プライドが許さない」といった考えは捨ててください。このまま何も行動を起こさずに時間を無駄にしてしまうと、住宅ローンを滞納することになり住宅を手放す可能性が出てきてしまいます。
但し、リスケジューリングを行う場合にはデメリットや注意点もあります。それをしっかり把握した上で相談するということを忘れないでいてください。
リスケジュールの注意点
リスケジュールでは返済条件の見直しを行いますが、決して返済が免除されるものではありません。それを理解した上で以下の点に注意してください。
- 金利が高くなる可能性がある
住宅ローンの優遇金利がある場合はリスケジューリングを行うと無くなると考えてよいでしょう。また変動金利の場合は見直しを行うので金利が0.5~1%引き上げられる可能性があります。 - 返済期間を延長すれば総返済額は増える
リスケジューリングでは月々の負担を軽減するために返済期間を延長することになりますが、これは利息を支払う期間が長くなるということを意味するものなので総返済額は増えることになります。 - 一時的な返済猶予は後から負担が増える
一時的な返済猶予は返済額がゼロ円になるわけではなく元金を据え置きにして金利分は支払い続けます。この時に完済年齢を変更しなければリスケジューリング後に毎月の返済額が増えて負担が大きくなります。 - 借入れや借り換えをするのが難しくなる
リスケジュールを行うと金融機関での債務者の評価が下がるため新たな借入れや借り換えをするのが難しくなります。ブラックリストに載るわけではないので絶対にできないことはありませんが断られるケースが多くなります。
以上のようにリスケジューリングは安易に行うと一時しのぎにはなっても、滞納リスクを回避できない可能性があります。逆に病気やケガなどの理由で滞納の可能性がある場合の一時的な返済猶予は大変有効です。
金融機関に相談する場合は、なぜ滞納しそうなのか理由を明確に説明し、返済期間の延長にするか一時的な返済猶予を行うかなど検討することが重要です。
住宅ローンの返済がきついと感じた場合の対策
ここでは環境の変化によって、住宅ローンの返済がきつくなってしまった場合の対策を紹介します。 同時に対策の前にチェックすべきポイントも紹介していますので、参考にしてみてください。
家計のチェック
住宅ローンの返済がきついと感じたら、まずは家計のチェックをしましょう。家計の管理は、詳細に続けていくのは意外と難しいものです。可能であれば、日々確認しておく必要がありますが、難しいようであれば困りそうと感じるタイミングで家計を見直しましょう。
家計の見直しポイントはいくつかありますが、代表的な見直し箇所を紹介します。
保険の見直し
保険は定期的に見直しや見返しが必要です。保険商品は進化しており、加入から時間が経っている保険商品は割高になっている可能性があります。
同じ補償内容であっても保険会社によって金額は違いますし、同じ保険会社であっても月々数千円安くなるといった場合もあるのに注意が必要です。「最低限の保険にしか加入していないからこれ以上は下がらない」と思っている方こそ、一度保険の見直しをしてみましょう。
保険の見直しが上手くいけば、無理な節約をしなくてもローンを返せる余裕が出てくるかもしれません。
自動車にかかる費用の節約
自動車は税金や車検・ガソリン・メンテナンスといった維持費がかかります。家計圧迫しがちな維持費の節約を考えてみるのも良いでしょう。
現在、普通乗用車に乗っているようなら軽自動車に乗り換えるだけでも節約になります。自動車税は約3分の1になり、燃費も良いのでガソリン代も節約可能です。普通乗用車のガソリン代は重なると大きい出費になりますので、節約に効果があります。
子育て世代ではなく、車に乗る回数が減っているという場合は自動車を売却し、カーシェアリングに切り替えるのも良いでしょう。維持費を考えれば、利用回数の制限も少ないものです。使わない月は自動車を持っているよりも、費用は明らかにかかりません。ぜひ、検討してみてください。
住宅ローン金利のチェック
家計・自動車に加えて、住宅ローンの金利も見直しておきましょう。最初に契約した住宅ローンの金利が有利なものであればいいのですが、少しでも低い金利のものがあれば乗り換えの検討をすべきです。
少しの差でも、借入金の金額が多かったり住宅ローンの期間が長かったりすれば、その差は数百万円になる場合もあります。支払う金額が減る訳ですから、当然ローンの返済は楽になります。
ネットにある「一括見積もりサイト」を使えば簡単に比較検討ができるので、金利を気にしていなかった方は試してみるといいでしょう。
住宅ローン控除の活用
住宅ローン控除とは、住宅ローンを借りて確定申告の際に申告すると所得税・住民税の減免が受けられるといった制度。借入先が一般的な銀行やフラット35の場合は住宅ローン控除の対象となります。
親や親族・一般的な金融期間以外からの借り入れは住宅ローン控除の対象にならないので注意が必要。現在、住宅ローン控除の控除率は1%。12月末時点の残高を基準に金額分の所得税・住民税が返ってくるのです。
残高が3,000万円分あれば、30万円分戻ってくるといった形ですので大きな金額です。忘れずに、必ず申請しましょう。ただし、住宅ローン控除を受けるにはいくつかの条件や書類を提出しなくてはいけません。
住宅ローン控除を受けるための条件
住宅ローン控除を受けるには、以下のような条件を満たす必要があります。
- 年収から各種控除を引いた額が3000万円以下
- 住宅ローンの返済期間が10年以上
- 購入した家の床面積が50㎡以上
- 住宅ローンの契約者自身が住んでいる
- 耐震性能を有している物件
- 木造住宅は築20年以内、鉄筋コンクリートの住宅は築25年以内
- リフォームの場合には、費用が100万円以上かかっている
ほとんどの場合は条件に当てはまると思いますが、確実に受けられるよう、よく確認しておきましょう。
住宅ローン控除を受けるために必要な書類
条件に加えて、住宅ローン控除を受けるには、以下のような書類を提出する必要があります。
- 本人記載の住民票の写し
- 住宅ローンの年末残高証明書
- 登記事項証明書
- 請負契約書
- 源泉徴収票
また、中古住宅の場合はさらに以下の書類のうち1つか必要です。
- 耐震基準適合証明書
- 既存住宅性能評価書
- 既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書
ここまでそろえたら、後は確定申告の時期になったら手続きに行きます。住宅ローン控除の方法はわからなくても会場で教えてもらえますが、多少期間に余裕を持って行きましょう。
融資先への相談
ここまで説明した、家計・自動車・金利の見直しを行っても住宅ローンの返済が苦しい場合、融資先の金融機関への相談をしましょう。
金融機関へ相談してローンを減らす方法は主に以下の2つの方法があります。
- 一定期間の返済を減額する
- 家賃収入を得て返済に充てる
ひとつずつ解説していきます。
毎月の返済を減額する
やむを得ない理由で収入が減る・支出が多くなるといった「一時的」に返済が苦しい場合は、短期間の返済額軽減を交渉してみましょう。 ただし、軽減期間の終了後に従来の返済額に加えて、期間中に軽減された額と金利の返済が加わります。
また、「一時的」ではない場合でも、毎月の返済額を減らすことは可能です。
残りの返済期間の延長をすれば、毎月の負担は継続して少なくなります。 ただし、返済期間が長くなるので、返済が長引きその分の金利負担額は増えるといった注意点もあります。
家賃収入を得て返済に充てる
自宅を賃貸にして、家賃収入を返済に充てる方法もあります。 住宅ローンが残っていても金融機関が承諾すれば賃貸化できる場合も。
また、「一般社団法人 移住・住みかえ支援機構」では、再支援借り上げ制度があります。
これは、住宅ローン返済が厳しくなった人を対象とした「3年間の定期借家契約で借り上げ」です。 3年限定の賃貸契約なので、契約終了後は戻ることができます。
とはいえ、これらの方法は、住宅ローン返済額が家賃収入よりも低い・家賃が発生しない住まいが必要になる方法です。
売却を検討する
ここまで行なった上で苦しい場合は、最終的な手段として住宅を売却する方法があります。
売却代金で住宅ローンの返済をする
売却を検討するときは不動産会社の査定をしてもらい、少しでも高い金額で売れるか・住宅ローンの完済ができるか確認しましょう。
というのも、売却額だけでローンの完済ができない場合は不足分の返済をしなくてはならないためです。 他の売却方法として、任意売却や競売もあります。
任意売却は滞納をせざるを得なくなり、競売にかかるまえに取れる選択肢。新たにローンが組めなくなってしまうといった、一定の不利益も生じます。
任意売却は高く売れる?
任意売却や競売は普通の方法よりも金額が安くなってしまう傾向にあります。
任意売却は、一般の人は買わないので、その分どうしても安い金額での取引になります。 一部では「任意売却は高く売れる」といった話を聞きますが、一般的に金額が一番高くなるのは通常の売却方法です。任意売却の魅力は競売より高く売れる点と、完全に手詰まりとなって競売になるよりお得という点です。
ブラックリストに載るタイミングは、任意売却や競売の決定よりも前の段階です。住宅ローンは支払いが難しいと感じたら、滞納前のできるだけ早いタイミングで一般の売り方をするのが最も良いと言えます。
通常の売却を行うときでも、注意点があります。一言で「不動産会社へ査定」といっても、売却額は固定ではありません。不動産会社によって相場を基準に、金額の高い低いがあります。
つまり、売る側でもある程度の自宅の相場を理解しておくことは重要ですし、複数の不動産会社に見積もり依頼をすることも大切です。 より高く売却するには、それなりの準備が必要ということですね。
焦らず金融機関に相談を!
返済金額や期間の見直しができる可能性があります
住宅ローンをまだ滞納していないけど、今後住宅ローンを滞納しそうなのであれば、すぐに借り入れをしている金融機関に相談しましょう。返済期間の延長や一時的な支払いの猶予ができる可能性があります。
東京スカイ法律事務所の田中弁護士に
無料で任意売却の相談をしてみる